ファインチューニング済み旧モデルが10月23日に停止。新規作成も2027年1月で終了
OpenAIの廃止予定ページに、ft-gpt-4など6つの識別子の停止日が明記されました。評価基盤Evalsも11月30日で終了。自社専用モデルが資産として残らない前提で、見積書で確認する4点を整理します。
提案書に「御社のデータでファインチューニングして精度を上げます」と書かれていることがある。自社専用のモデルができる、と読める一行で、追加費用も通りやすい。
しかしその「自社専用のモデル」は、提供元の都合で消える。OpenAI の廃止予定ページには、2026 年 10 月 23 日にファインチューニング済みモデルを削除すると、対象の識別子まで並べて書かれている。

公表されている事実
OpenAI の API ドキュメントの廃止予定(deprecations)ページに書かれているのは、次の 3 系列である。
1. ファインチューニング済みモデルが 10 月 23 日に停止する
「Legacy GPT model snapshots」の項目に、旧世代のスナップショット(gpt-4-0613、gpt-4-turbo、gpt-4o-2024-05-13、o1、o3-mini、o4-mini、gpt-image-1 など)の停止日として 2026 年 10 月 23 日が記載されている。そして同じ項目に「We are also removing fine-tuned versions as below」(以下のファインチューニング済み版も削除する)と明記され、対象が列挙されている。
| 停止日 | 削除される識別子 | 示されている代替のベースモデル |
|---|---|---|
| 2026-10-23 | ft-gpt-4 |
gpt-5.6-sol |
| 2026-10-23 | ft-gpt-3.5-turbo |
gpt-5.6-terra |
| 2026-10-23 | ft-gpt-4.1-nano-2025-04-14 |
gpt-5.6-luna |
| 2026-10-23 | ft-o4-mini-2025-04-16 |
gpt-5.6-terra |
| 2026-10-23 | ft-babbage-002 / ft-davinci-002 |
gpt-5.6-terra |
2. ファインチューニングそのものが段階的に閉じられている
2026 年 5 月 7 日付の告知として、セルフサービスのファインチューニングへのアクセスを 3 段階で絞る日程が書かれている。
- 2026 年 5 月 7 日 — 過去にファインチューニングを実施していない組織は、ジョブの作成・学習ができない
- 2026 年 7 月 2 日 — 過去 60 日にファインチューニング済みモデルで推論していない組織も、ジョブを作成できない
- 2027 年 1 月 6 日 — 現に利用している既存顧客も、新規のファインチューニングジョブを作成できなくなる
推論については「Inference on fine-tuned models will be disabled only when the underlying base model is deprecated.」(ファインチューニング済みモデルでの推論は、基盤モデルが廃止されたときにだけ無効化される)と書かれている。つまり手元のモデルの寿命は、自分が選んだベースモデルの寿命と同じである。
3. 評価基盤(Evals)も止まる
同じページに、2026 年 6 月 3 日に Evals プラットフォームの廃止を通知したこと、2026 年 10 月 31 日に既存の eval が読み取り専用になり、2026 年 11 月 30 日にダッシュボードと API を停止することが書かれている。
なお料金ページ側では、代替として示されている gpt-5.6-sol の価格(入力 100 万トークンあたり $4、出力 $20)が少なくとも 2026 年 11 月 21 日までの導入価格と注記されている。移行先の単価も、まだ固まった値ではない。
発注者・企業への影響
ここからは見立てである。
1. 「学習済みモデル」は納品物として残らない
ファインチューニングの提案で発注側が期待するのは、他社が持っていない資産ができることである。だから追加の学習費用に金を払う判断になる。
ところが今回の記述が示しているのは、その資産の置き場所が提供元のアカウントの中であり、基盤モデルの廃止に連動して消えるという事実である。10 月 23 日に消える ft-gpt-4 を使っていた案件は、学習の手間をもう一度やるか、別の方式に作り替えるかを選ぶことになる。
残るのは学習済みモデルではなく、学習に使ったデータと、その作り方の記録だけである。見積書でファインチューニングが提案されているなら、確認すべきはモデルの精度よりも先に「学習データの JSONL と前処理スクリプトは誰の手元に残るのか」になる。AI開発の引き継ぎで確認する12項目で挙げた資産の所在の話が、そのまま効く。
2. 評価の記録が消えると、次の比較ができない
見落としやすいのは Evals 側である。精度を上げる案件では、どの入力でどう間違えたかの記録が本体の価値になる。モデルを乗り換えるときに「前より良くなったか」を判定する基準が、その記録だからである。
その記録が提供元のダッシュボードの中だけにあると、11 月 30 日で参照できなくなる。評価データセットと採点基準を自社のリポジトリに置いてある案件だけが、乗り換えの判断を自力でできると考えられる。評価と運用を先に決めるで書いた通り、評価は納品後に効く部分である。
3. 「ファインチューニングしない」提案のほうが、いま安いことがある
新規のジョブ作成が 2027 年 1 月 6 日で閉じるのであれば、これから設計する案件でファインチューニングを前提にする合理性は下がる。プロンプト設計、検索による文脈の補強(RAG)、出力の型を固定する方式のほうが、提供元の都合に影響されにくい。
ただし**「ファインチューニングは不要です」と言い切る提案も、理由を聞く必要がある**。精度が足りない原因が文体や分類ラベルの揺れにある場合、ファインチューニングのほうが安く済むことは実際にある。安いほうではなく、なぜその方式を選んだかを説明できる会社を選びたい。方式がばらつく案件こそ、無料で相見積もり・相談で同じ案件票を複数社に渡して、前提の違いを並べて見るほうが早い。
4. 停止日は保守契約の期間より先に来る
今回の 10 月 23 日も、11 月 30 日も、2027 年 1 月 6 日も、1 年契約の保守の途中に入る日付である。これはプレビュー版と無料枠の期限で扱ったのと同じ構図で、提供条件の変更は保守の更新時期に合わせて来ない。
見積書で確認する 4 点
- ファインチューニングが含まれる場合、どのベースモデルを使うか。 識別子まで書いてもらう。その識別子の廃止予定日が公表されているかを、提供元のページで自分で確認する
- 学習データ・前処理スクリプト・評価データセットの保管先と所有者。 提供元のアカウント内だけに置かない。契約書に「発注側のリポジトリへ納品する」と書く
- 基盤モデルが廃止されたときの再学習・移行の費用。 保守費の範囲に含めるのか、別途見積もりなのか。見積もりの前提条件と有効期限に書いてもらう
- 精度の判定方法。 提供元の評価ツールに依存していないか。依存しているなら、そのツールが止まったときに何を使うか
1 番と 3 番は、ファインチューニングを提案する会社なら即答できる。即答できない場合は、方式の選定が検討ではなく流用である可能性が高い。
まとめ
公表されたのは、ある会社の機能の廃止日程である。発注側にとっての意味は、自社専用に仕立てたモデルは資産ではなく、借りている状態だという点にある。
やることは 2 つ。見積書にファインチューニングが入っているなら、ベースモデルの識別子と廃止予定を自分で確認すること。そして学習データと評価データセットを、提供元の外に置く形で納品してもらうことである。モデルは消えるが、データと評価基準は消えない。
参考・出典
- OpenAI API ドキュメント「Deprecations」 https://developers.openai.com/api/docs/deprecations
- OpenAI API ドキュメント「Pricing」 https://developers.openai.com/api/docs/pricing
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