AI開発コネクト
AIニュース・ツール活用

音声AIの単価が1分0.05ドルに。OpenAIの新モデルで見積書の何が変わるか

2026年9月10日公開の全二重モデルは音声セッションが1分0.05ドル・秒単位課金。ただしバックエンドのモデルとツールは別課金で、1通話の原価はモデル選択で2倍以上動きます。見積書で見る5点を整理します。

公開: 2026.09.17 / 更新: 2026.09.17

2026年9月10日、OpenAI が API に GPT-Live-1 を追加した。人の話を聞きながら同時に話せる「全二重(full-duplex)」の音声モデルで、音声セッション1分あたり0.05ドル、秒単位の課金と発表されている。

電話の自動応答や音声の受付をAIで作る案件は、これまで見積書の作り方が会社ごとにばらばらだった。単価が「1分いくら」で公表されたことで、発注側が1通話あたりの原価を自分で検算できるようになった

ただし、この0.05ドルは音声のやり取りをする部分だけの値段である。公式ドキュメントには「バックエンドのモデル利用とツール利用は別課金」と明記されている。この一文を読み飛ばすと、見積もりは確実に外れる。事実を確認したうえで、見積書のどこを見ればよいかまで整理する。

受話器を外した電話機から伸びた管が2つの計量メーターに分かれている

公表されている事実

OpenAI の開発者向けドキュメントと公式アナウンスで確認できるものだけを並べる。

項目 内容
公開 2026年9月10日、API で提供開始
特徴 全二重。聞きながら話せる。沈黙・割り込み・相づちを扱う
価格 音声セッション1分あたり0.05ドル。秒単位での課金(分に切り上げない)
別課金 バックエンドのモデル利用とツール実行は別と明記
役割分担 音声のやり取りは GPT-Live-1、推論とツール利用は別のモデルに委譲する
委譲の方式 自前のエージェントを接続する方式と、OpenAI 側にバックエンドを持たせる方式の2通り
接続 ブラウザは WebRTC、サーバー側音声は WebSocket、電話は Telephony / SIP
付属機能 音声認識の文字起こしと応答テキストの取得、キーワードバイアス、明示的なターン検出、12種類の音声

公表されているベンチマークは、カスタマーサポートの課題完了率が 83.6%(前世代は45.7%)、ターン交代の遅延が 0.798秒、ツール呼び出しの成功率が 87% というもの。いずれも提供元が自社の条件で測った数値である点は割り引いて読む必要がある。

論点 1. 「音声AIの作り方」は3通りあり、原価の形が違う

公式のガイドは、音声エージェントの構成を3種類に整理している。ここが見積書の読み方を左右する。

構成 仕組み 課金の形
3段構成(チェーン型) 音声認識 → テキストでLLMが考える → 音声合成、と3つを順に通す 3つの単価の積み上げ。文字起こしは分課金、LLMはトークン課金
音声そのまま(Realtime) 1つのモデルが音声を直接受け取り、音声で返す 音声トークンでの課金
全二重(GPT-Live) 音声のやり取りは専用モデル、考える処理は別のモデルへ委譲 分課金 + バックエンドのトークン課金

ここで注意したいのが2番目の音声トークンである。公式の料金表では、リアルタイム系モデルの音声入力の単価は、同じモデルのテキスト入力の8倍に設定されている(1Mトークンあたり音声32ドル / テキスト4ドル)。小型版でも音声10ドル / テキスト0.6ドルと差は大きい。

つまり 「LLMのトークン単価が下がったから音声AIも安くなる」とは言えない。音声を直接モデルに流す構成では、テキストの値下げは効きにくい。トークン課金そのものの考え方は AI APIの料金体系と月額の試算方法 にまとめている。

論点 2. 1通話の原価は「分課金 × 通話時間」では出ない

全二重の構成では、1通話で課金が2か所に立つ。音声の口の部分(分課金)と、考える部分(トークン課金)である。

3分の通話を例に、2か所を分けて置いてみる。バックエンドの入力は履歴込みで3万トークン、出力1,500トークンと仮定した概算である。

内訳 上位モデルを使う場合 中位モデルを使う場合
音声セッション(3分 × 0.05ドル) 0.15ドル 0.15ドル
バックエンドのモデル 約0.38ドル 約0.08ドル
1通話の合計 約0.53ドル 約0.23ドル

※ 公表単価をもとにした本サイトの試算。実際の値は会話の長さ・システムプロンプト・ツール呼び出しの回数で変わる

同じ「1分0.05ドル」でも、バックエンドに何を使うかで1通話の原価が2倍以上動く。月1万通話なら、この差はそのまま月額の差になる。

だから見積書で確認すべきなのは単価そのものではない。**「どのモデルを、1通話あたり何トークン使う前提か」**である。ここが書かれていない運用費の見積もりは、他社と並べても比較にならない。見積書を同じ土俵に乗せる手順は 相見積もりを比較する方法 を参照してほしい。

論点 3. 電話網の費用はAIの費用に含まれない

SIP 対応が入ったことで、電話の自動応答をAIで組むハードルは確実に下がった。交換機の前段に置く仕組みを自前で作らなくてよい。

ただし、電話をかける・受けるための費用はモデルの料金とは別建てである。

  • SIPトランク(電話網への接続回線)の基本料と通話料
  • 番号の維持費
  • 同時通話数の上限に応じた回線の確保

これらは通信事業者との契約で決まり、AI側の単価が下がっても動かない。見積書に「音声AI利用料」しか書かれていないなら、電話網の費用を誰が持つのかを必ず確認する。 発注側の既存回線を使うのか、開発会社が再販するのかで、月額の見え方がまったく変わる。

API 実費を誰が負担するかという論点そのものは AI運用費は定額保守か従量精算か に整理してある。

論点 4. 検収条件に「会話の質」を書けるようになった

公式のガイドは、全二重の構成について**「最初の音が返るまでの時間・不自然な沈黙・発話の重なり・割り込みへの譲り方を測れ」**と書いている。裏を返せば、これらは実装次第でばらつくということである。

音声の案件は「動いた/動かない」で合否を判定しにくい。文字起こしの精度だけを検収条件にすると、「聞き取れてはいるが、会話として不快」なものが納品されうる。受け入れテストには次のような条件を入れておきたい。

  • 発注側が話している途中で割り込んだとき、システムが発話を止めて聞く側に回ること
  • 応答の最初の音が返るまでの時間を、実回線で100通話計測し、その分布を報告すること
  • 背景に業務音がある環境(実際の設置場所)で、上記を再測定すること

社内の会議室の静かな環境でデモを見て発注し、コールセンターの現場で使えなかった、というのは音声案件で最も多い失敗である。用途ごとの費用と精度の考え方は 音声AI・文字起こしの費用相場 にまとめている。

費用にどう効くか

受け取った見積書で確認するのは次の5点である。

  1. 構成はどれか。 3段構成・音声そのまま・全二重のどれを採るか。原価の形が変わる
  2. 1通話あたりの想定時間とトークン量が書かれているか。 書かれていなければ質問する。試算の前提が無い運用費は比較できない
  3. バックエンドのモデル名が特定されているか。 「最新のLLMを使用」では原価が確定しない
  4. 電話網の費用の持ち方。 回線・番号・通話料を誰が契約し、誰が払うのか
  5. 会話の質の合否基準。 割り込み・沈黙・応答遅延を、実環境で測る条件になっているか

単価の公表は、発注側にとって素直に良い変化である。1分0.05ドルという数字が出た以上、「音声AIは高いので」で片付けた見積もりは通らない。 一方で、その0.05ドルが総額の一部でしかないことも同じくらい重要だ。費用を抑える方向の設計は AIチャットボットを安く作る方法と、削ってはいけない部分 と考え方が共通していて、モデルの単価を追う前に、扱う範囲と会話の長さを固定するほうが効く

まとめ

  • 2026年9月10日、OpenAI が全二重の音声モデル GPT-Live-1 を API で公開した。音声セッションは1分0.05ドル・秒単位課金
  • ただしバックエンドのモデルとツール利用は別課金。1通話の原価は分課金だけでは出ない
  • リアルタイム系の音声トークンはテキストの8倍の単価。テキストの値下げは音声案件に効きにくい
  • SIP対応で電話AIは作りやすくなったが、電話網の費用はAI料金に含まれない
  • 見積書では「構成」「1通話の想定量」「バックエンドのモデル名」「電話網の費用の持ち方」「会話の質の合否基準」の5点を確認する

手元の見積書がこの前提を書いているかは 見積書チェック で機械的に確認できる。これから発注する段階なら、費用診断 で条件を整理してから相談に進むと、通話時間や想定件数のような前提を最初から書面に載せやすい。

参考・出典

  • OpenAI Developers Docs「Models: gpt-live-1」(全二重の音声モデルであること、音声セッション1分あたり0.05ドル・秒単位課金、バックエンドのモデル利用とツール利用が別課金であること) https://developers.openai.com/api/docs/models/gpt-live-1
  • OpenAI Developers Docs「Pricing」(リアルタイム系モデルの音声入力・テキスト入力の単価。1Mトークンあたり音声32ドル/テキスト4ドル、小型版は音声10ドル/テキスト0.6ドル) https://developers.openai.com/api/docs/pricing
  • OpenAI Developers Docs「Voice agents」(音声エージェントの3構成、バックエンド委譲の2方式、応答時間・沈黙・重なり・割り込みを計測せよという記載) https://developers.openai.com/api/docs/guides/voice-agents
  • OpenAI「Build more natural voice experiences with GPT-Live-1 in the API」(2026年9月10日公開。12種類の音声、文字起こしとターン検出、WebRTC / WebSocket / Telephony・SIP、課題完了率83.6%・ターン交代0.798秒・ツール呼び出し成功率87%) https://openai.com/index/introducing-gpt-live-1-in-the-api/

※ 本文中の1通話あたりの試算は、公表単価に「3分・入力3万トークン・出力1,500トークン」という仮定を置いた本サイトの概算である。ベンチマークの数値はいずれも提供元の公表値。円換算額は為替と単価改定で動くため示していない。契約するリージョン・通貨での単価は必ず自分で確認してほしい。

同じ条件で比較するから、適正価格が分かる。

複数のAI開発会社に同じ条件で見積もりを依頼。安さではなく「適正価格」で発注できます。

無料で一括見積もり →
無料で費用診断見積書チェック