DeepSeekのAPI単価は時間帯で2倍。日本の業務時間はすべて高い側に入る
ピーク時間帯は月〜金のUTC01-04時と06-10時、日本時間では10-13時と15-19時です。リアルタイム処理と夜間バッチで運用費が2倍変わります。保存先・学習利用・準拠法の確認点も整理しました。
AI の運用費は「単価 × トークン数」で出せる、というのが見積書の前提だった。その前提に時間帯という変数が入ってきている。同じモデル・同じ処理でも、動かす時刻によって請求額が 2 倍変わる。
DeepSeek は 2026 年 8 月 16 日(UTC)から、API にピーク / オフピークの二重価格を導入している。公式ドキュメントの表現は「オフピーク価格はピーク時価格の半額に設定する」というもので、利用者に実際の使い方に合わせて処理を組ませる狙いだと説明されている。そして 9 月 10 日には、この料金体系の上に新モデル DeepSeek-V4.1-Flash(モデル ID deepseek-flash)が載った。

何が起きているか
公式の料金表(api-docs.deepseek.com)に載っている値は次のとおり。単位は 100 万トークンあたりのドル。
| モデル | 区分 | オフピーク | ピーク |
|---|---|---|---|
| deepseek-flash | 入力(キャッシュヒット) | $0.003 | $0.006 |
| deepseek-flash | 入力(キャッシュミス) | $0.15 | $0.30 |
| deepseek-flash | 出力 | $0.60 | $1.20 |
| deepseek-v4-pro | 入力(キャッシュヒット) | $0.022 | $0.044 |
| deepseek-v4-pro | 入力(キャッシュミス) | $0.66 | $1.32 |
| deepseek-v4-pro | 出力 | $1.98 | $3.96 |
ピーク時間帯は 月曜から金曜の 01:00〜04:00 と 06:00〜10:00(UTC)、中国の祝日を除く、と明記されている。それ以外の時間と週末はすべてオフピークになる。
9 月 10 日の更新では、V4.1-Flash について「ネイティブのマルチモーダル視覚理解」と、推論速度・スループットの向上が挙げられている。旧 ID の deepseek-v4-flash と deepseek-v4-flash-vision-exp は提供を終了し、互換のため一時的に V4.1-Flash へ振り替えられる。この提供終了と撤回の経緯は DeepSeekが9月14日の提供終了を撤回 に書いた。
日本時間に直すと、業務時間がほぼ高い側に入る
ここが日本の発注者にとっての実務上の要点である。UTC を日本時間(UTC+9)に直すと、ピーク時間帯はこうなる。
| UTC | 日本時間 |
|---|---|
| 01:00〜04:00 | 10:00〜13:00 |
| 06:00〜10:00 | 15:00〜19:00 |
つまり月曜から金曜の 午前 10 時から午後 1 時と、午後 3 時から午後 7 時。日本の一般的な就業時間 9:00〜18:00 のうち、高い側に入らないのは朝の 1 時間と昼休み前後の 2 時間だけである。社員が使う社内ツールは、構造的にほぼ全部がピーク価格で動くことになる。
一方、夜間や早朝に回すバッチ処理、週末にまとめる集計は全部オフピークに入る。同じ月間トークン量でも、リアルタイム処理中心の設計と、夜間バッチ中心の設計とで運用費がちょうど 2 倍違うという状態になる。
キャッシュと組み合わせると幅はさらに開く。deepseek-flash の入力で、最も安いオフピークのキャッシュヒット $0.003 と、最も高いピークのキャッシュミス $0.30 の差は 100 倍である。プロンプトの共通部分をキャッシュに乗せる設計をしているかどうかが、そのまま請求額に出る。キャッシュの仕組みは LLMのキャッシュ読み取りが75%値下げ で扱った。
データの置き場所と規約は別に確認する
価格だけで判断できない部分がある。中国の事業者の API を業務で使う場合、次の 3 点は価格と切り離して確認しておきたい。
- 保存先: DeepSeek のプライバシーポリシーは、個人情報を「中華人民共和国内の安全なサーバー」に保管すると記している
- 学習利用: 同ポリシーは、取得した情報を「機械学習モデルとアルゴリズムの訓練と改善」に利用すると書いている。利用者にはモデル訓練や技術最適化への利用を拒否する権利があるとも併記されている。つまり既定では利用される側に置かれているため、拒否の設定を誰がいつ行うかを決めておく必要がある
- 準拠法: 利用規約は「本規約の成立・履行・解釈および紛争解決は中華人民共和国の法律に準拠する」とし、管轄は杭州の登記地を管轄する裁判所としている
日本側の制度としては、個人情報を含むデータを国外の事業者へ提供する場合、個人情報保護法の「外国にある第三者への提供」の規律がかかる。個人情報保護委員会のガイドラインでは、原則として本人の同意を得たうえで、移転先の国の制度と提供先の体制について情報提供すること、提供後も継続的に(少なくとも年 1 回)状況を確認することが求められている。
これはどこの国の事業者が良い・悪いという話ではない。米国の事業者を使う場合も越境移転の規律は同じようにかかる。どの API を使うかによって、確認すべき書類と社内手続きの量が変わるという設計上の事実として扱うのが妥当である。外部 API に何を送ってよいかの線引きは AI開発のセキュリティ設計 に整理した。
発注者・企業への影響
見立てとしては、時間帯別の単価は他社にも広がりうると考えられる。計算資源の逼迫は各社に共通していて、需要を平準化したい動機があるためだ(OpenAIが月200ドルプランの新規受付を停止)。そうなると、見積書の運用費の欄は「単価 × 件数」だけでは足りなくなる。
いま発注側でできることは 3 つある。
- 処理を「即時が要るもの」と「翌朝でよいもの」に仕分ける。 要件定義の段階でこれをやっておくと、設計でバッチに寄せられる。夜間に回せる処理が多いほど運用費の振れ幅は小さくなる
- 見積書の運用費に、どの時間帯・どの価格で計算したかを書かせる。 書いていなければ、その数字はどちらの単価で出したのか分からない
- 外部 API の保存先・学習利用・準拠法を、見積依頼の時点で条件として示す。 後から変えると設計のやり直しになる
この 3 点はいずれも案件票に書き込める項目である。同じ条件で複数社に投げたい場合は 無料の相見積もり から作れる。運用費の内訳の読み方は AIシステムの運用費 に手順をまとめてある。
参考・出典
- DeepSeek API Docs「Models & Pricing」(モデル別のピーク / オフピーク価格、ピーク時間帯の定義) https://api-docs.deepseek.com/quick_start/pricing/
- DeepSeek API Docs「Change Log」(2026年9月10日 V4.1-Flash、2026年8月16日 ピーク / オフピーク価格の導入) https://api-docs.deepseek.com/updates
- DeepSeek Privacy Policy(保管先・学習利用・拒否する権利) https://cdn.deepseek.com/policies/en-US/deepseek-privacy-policy.html
- DeepSeek Open Platform Terms of Service(準拠法・管轄) https://cdn.deepseek.com/policies/en-US/deepseek-open-platform-terms-of-service.html
- 個人情報保護委員会「外国にある第三者への提供編」ガイドライン https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_offshore/
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